pekoriperoriのブログ

主に読書、美味い店、旅行の記録と日々考えていることのメモ。知り合いには教えない予定。

自分でないとダメだと言われることと、上司との別れ。

転職して1ヵ月が経った。
先月までは約3年ほど、割とスピードの早い大企業で役員秘書の仕事をしていた。
たった3年と思う方もいるかもしれないが、自分としては久しぶりに「やり切った」感がある。
その達成感が生まれたひとつの大きな理由が、「私でないとダメだと言われる仕事がしたい」という、社会人になってからずっと持ち続けていた目標を達成できたということ。
私は自分の上司が大好きで、心から惚れ込み、心からこの人のために、と思い仕事に取り組んできた3年間だった。
本当に寝ても覚めても彼のことを考え、この人の秘書としてどうあるべきか、理想像をすり合わせては「自分」というものをほぼ完全に消し去り、そこに向かってめちゃくちゃ努力をしてきたと思う。
それは服装や振る舞いなど目に見えるものから、仕事に取り組む心構えや人との関係構築だったり、もちろん日常業務における仕事の仕方やアウトプットのレベルまで、「こうあるべき」姿をどんどん進化させながら細かくPDCAを回し、徹底的に追求してきた。

そしてその目標が達成できたと知ったのは、辞めることを決めた時だった。
いろいろと理由があって退職を決意したのだが、それを初めて口にした時からの数か月は、非常に苦しい時間が続いた。
単に嫌なことがあったというのもそうだが、自分の仕事感や人生について当然ながら深く深く考えさせられる時間が続き、迷いも大きく深く、退職した後の今でさえも、まだ自分の中で解決できないモヤモヤが続いている。

1:1のこういった近い距離で3年も一緒にいると、感覚としては(当然ボスと私には何もなかったが)恋人や夫婦に似た関係に近づいてくる。
初めて辞めると言った時、その関係はいきなり大きく崩れ、その後も何度も何度も、本当に想像を絶するレベルで話し合い、崩れたものを修復してはまた崩れ、を繰り返し続けた。
精神的にお互いものすごく疲弊したし、辞めることを止めるという選択肢も幾度となく検討した。
その話し合いの過程において、ボスからも彼を支えるマネージャーたちからも、私でないとダメだ、と繰り返し数か月に渡って言われ続けたのだ。

自分があれほど望んでいた「自分でないとダメだ」という状況は、自分にとって本当に辛いものであり、何と身勝手な目標だったんだろう、と達成したその時に初めて気づいた。
追い続けてきた「理想像」は間違っていなかったし、きちんと結果も出してきたが、結局「自分でないとダメ」なんていう状況は会社にとって許されるものではなく(一個人なんていつ倒れるか分からないし、私のようにいつ辞めたいと言い出すか分からないし、その時に代わりを立てられない状況するべきではない)、こういう状況を作ってしまったが故に、退職した今でさえ後任は決まっておらず、戻ってこいと言われている。
私の目標云々以前に、秘書という仕事は人間対人間の相性も深く関係してくるので、もともと代わりを立てづらいポジションではあるが、精神的に共依存状態にあったことは間違いなく、その関係を作った原因の一端は私の努力の方向性の誤りにあったとも思えるし、じゃあどうすべきだったのかという点については未だに答えが出ていない。

最終出勤日は配下のメンバーみんなにfarewellのセレモニーをしてもらい、とても温かく送り出してもらったが、ボスはとうとうその場に来てくれなかった。
そして最後の最後、夜になってようやく席に来て、お互い憔悴しきった状態で1時間程話したが、もう今まさに別れる恋人のようだった。
3年間育てていただいた感謝の気持ちと、思うところをメールでと思っているが、まだどうしても書けそうにない。今になってもまだ心を揺さぶられ続けていて、何でかわからないが傷を負ったようになってしまっている。

こうしてこの冬は、3年付き合った彼氏と、3年連れ添った上司といっぺんに別れることとなった。